排気量277ccの差は有利?不利?
排気量998cc/42馬力の通称ミニ1000が、そのまま街中を走行する分には1300(1275cc)のミニと大差あるとは思えません。しかし真夜中の首都高速や箱根辺りの峠道では、早々に各ギアで頭打ちとなり、無改造のミニ1000では全く歯がたちません。1300に比べ若干軽量な1000とはいえ排気量300cc(正確には277cc)分以上に遅く感じられることになります。
ところがこの300cc分を上回るパワーを手に入れると、1300(最大出力65〜75馬力)よりはるかに楽しいミニ1000改に大変身するのです。その理由をご説明致します。
まず、998エンジンのピストンストローク(76.2mm)が1275エンジン(81.3mm)よりかなり短い(その差5.1mm)為、簡単なチューニングでレスポンス良く吹け上がる「良く回り、トルクのあるエンジン」に近づきます。ボア/ストローク共に数値では僅かな差ですが【277ccの差】以上のアドバンテージがミニ1000にはあるのです。
それでは1300ミニにはどのようなウィークポイントが存在するのでしょうか?先に解答すると、90馬力以上を求めると各部の補強が必要となりコスト/馬力が割高になってしまいます。
パワーアップに伴い強化ステアリングアーム、HDテンションブッシュ、トルクロッドブッシュ、そして何よりも大切な馬力に合ったタイヤとブレーキが無い事には話しになりません。90馬力を上回る車体には12インチのハイグリップタイヤに対してでもLSD(リミテッドスリップデフ)なる部品が必要となり、LSD装着によっても①馬力損失、②重量増加、③オイル温度の上昇などが連鎖的に関わってきます。
①馬力損失は何馬力くらいなのでしょう?
②重量増加は何kgでしょうか?
③オイルクーラーは何段位が必要でしょうか?
これらの話はLSDの種類によっても異なりますが①損失3〜5馬力位と言われており、②重量5〜7kg位は増加するでしょう。そして③13段のオイルクーラーが日本ではベストでしょう。目標90馬力が、実は85馬力+重量増加+etc・・・となって行く訳です。
1300ミニ(キャブ&インジェクション)に超現実的な簡単チューニングを行う際には全く問題無いですが、持て余すパワーと走行性能を望めば確実にミニ1000改よりコストがかかり“乗って楽しい”ミニ1300改にするには少し難しいと言う事なのです。同じ30馬力アップを目論めば、1000と1300ではコストもフィーリングも大きく差が生じます。
90馬力以下なら全ての部品強度に対して、それ程、極端に悪化する事は無いので“乗って楽しいミニ。”にするには結局90馬力以下くらいが理想的でしょう。これはクーパーS MKⅠ〜Ⅱに近いスペックの1300ccで80馬力位がもっとも使い勝手の良いエンジンと言う事にもなるのです。1300ミニでは、10〜15%程のパワーアップまでがお買い得という事で、それから上は高額な割に“乗って楽しいミニ。”とはイメージが離れていく訳です。
『本当にクーパーS(1960年代)でベストなフィーリングのエンジンは1071ccである』と言う事を英国でも良く聞いていたので、最大出力のエンジンが常に良い実用性と好フィーリングを持っているとは限らない訳です。
個人的には1300ccの多大な振動と雑音を考えると『1071ccでストローク68.26mmの+060ボアのチューニング1200ccミニに乗ってみたい』と想いを巡らせております。
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