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#38の現在

ゼッケン38のオンボロミニ1000が3年間に渡る改良と練習で、筑波サーキット1分18秒台からスタートし、今ではなんと1分11秒965のベストタイムを記録。このタイムは08年3月16日に行われましたidlers gameでのタイムでありますが、そのレースの予選ベストタイム1分11秒558とは僅か0.407秒差、決勝ベストタイム1分11秒008から0.957秒差で、しかも相手が1300㏄ウェーバー仕様の純レーシングミニである事を考えますと立派な成果と言えるでしょう。

この様に、SU1 1/4ツインキャブとミニ1000(現在1060cc)エンジンの組み合わせは、絶対に「速いミニ」である事の証明は出来たと思いますが、皆様はどのように思いますか?

弊社ホームページ上のレーシングカー紹介のページに詳細スペックが掲載されておりますので、是非ご覧になって下さい。

 

さて、ここからかなり難解な話に入っていくつもりですが、多くの方が忘れがちになる、自動車が3つの要素で必ず出来上がっているという事をもう一度確認して下さい。

それは、走る【加速】、止まる【減速】、そして曲がる【コーナリング(旋回運動性能)】と言われる3つです。エンジンの出力向上と車高の低さだけでは、公道でもサーキットでもクルマはそれ程速くはならないと言う事です。軽量かつ理想的な重量バランスの中で充分なシャシー剛性があるロータスやケータハムの様に、何よりも『全てのバランスが最も大切である』と言う事です。

カタログに50:50が理想的なバランスであると書かれているのを見た事あると思いますが、同じ50:50でも重量(軸重)さえ同一ならベース車両は何でも良いのかと言うと、それは全く間違いなのです。計測上50:50の FR車のサルーンの場合、スペースのほとんどが人間の乗る空間となり、前方はエンジンとトランスミッションとフロントサスペンション、そして後方にはデフとリアサスペンション、ガソリンタンクなどが重量物となります。

BMW E36 M3(3Lモデル)の場合、電動シート類や内装カーペットなどで150kg近くの軽量化となります。この軽量化を進化させてゆくとだんだんフロントヘビーな車輌へと変身していきます。ボンネットとトランクをカーボンまたはFRP製で軽量化すると、大きく重い直列6気筒はどんどん不利に働き始めます。エンジン前方にあるラジエターと補器類が大した軽量化ができない為に50:50のバランスが60:40に近づいてしまうのです。昔ヨーロッパのレースでV型6気筒3L OHVのカプリにBMW3.0CSLが負けてしまった事もアンバランスが原因だったはずです。

「速いミニ」を切望するのであれば、無理、無駄のほとんどない計画を、それも正確に立てる必要性があるのです。20数万円も出費してデェープディッシュのピストンに準レース用LCBと40φウェーバーを取り付けただけでは、馬力は3%も上昇せず、燃費は80%ダウンとなってしまうのです。先日もこれを実行された方がおいでになりましたが、悲劇の始まりを感じました。

車体の改造の方が重要なのですが、皆様が一番興味のあるエンジンのパワーアップから話を始める事にします。

1300ccのAタイプエンジンを何馬力位まで出力アップを図ると理想のエンジンになるかを先ずお知らせ致しますと、『90BHP位が6800RPM以内で』と言う事になります。「自分のミニは100馬力以上出ている!」「筑波サーキットを1分13秒台で110BHP位かな?」「セリカより早かったぁ!120馬力以上かも!?」等々・・・これらの話は全て確証がない為に、数字は全く「でたらめ」「ウソ」と思って下さい。「あのカムとステージ3のヘッドで、オーバー90馬力」も、「ウェーバーキャブとレース用タコ足で100馬力」も、これらの話は全て希望、切望、願望の範囲であって何も確証がないのなら、これもまた「でたらめ」と「ウソ」のどちらかと信じて下さい。

90BHPを確実に出力するチューニングエンジンをあなたのミニ1300スタンダードに搭載してしまうと、ブレーキ、サスペンション、冷却、そして各部のマウント類がお役に立たなくなり、直線の出力だけがどうにか楽しめる程度で、「90BHP」の恐怖心があなたの自尊心をいとも簡単にコーナー手前で壊してしまう事になるでしょう。“あなたのチューニングミニの本当の出力、馬力”を知らない方がほとんどで、ローリングロード、ベンチテスターとなる機械で計測した方は少ないはずで、これでは「90BHP」がどれくらいかも理解しにくいという事になります。

排気量早見表 (1300cc)  
ストローク×ボア STD +20 +40 +60 73.5mm 74.0mm
 76mm 1191 1209 1226 1243 1290 1308
 79mm 1238 1256 1274 1297 1341 1359
 81.33mm 1275 1293 1312 1330 1379 1399
 84mm 1317 1336 1355 1374 1425 1445
 86mm 1348 1368 1387 1407 1459 1480

最大ボアが必ず「割安」と言う事もありませんので、「公道用のミニ」であるならば「90BHP」を目標にする際、1293ccでも十分であると言えます。どのボアをチョイスするにしても1380ccになるほど、色々なリスクも増大するという事も覚えておいて下さい。

ブロックにどのボアのピストンを入れるかは、そのメカニックの哲学にもよりますが、1275ccから1000分の10インチずつ(0.254mm)各段階的にボアが広げられるようになっており、ピストンもそのサイズ毎にあるわけで、もちろんピストンリングもサイズ毎に存在しているのです。そしてなぜスタンダードから+60(1.524mm)まで5段階ものサイズが存在するのか!それは、ピストンボアの内側の傷や段の深さによって、最適なボアを選択できるよう親切な修理をするためなのです。英国では2度3度とエンジンオーバーホールをするミニオーナーは珍しくないのです。そして、自分でエンジンを修理するミニオーナーの為に、なるべく多くのサイズが存在するのです。

これは、クランクやコンロッドのベアリングサイズについても同じことが言えるのです。ピストンを入れ替えないで、ピストンリングだけのオーバーホールも安上がりな方法の一つであり、この方法でも相当の確率で圧縮が正常に戻ります。

1380ccへの排気量アップには73.5mm直径のピストンを使用することになり、このピストンを使用するにあたり《オフセットボーリング》なることを行わないで、ボーリングをするとピストン壁が薄くなりすぎてブロックにクラックが入る可能性が高まります。意外に日本のボーリング屋は、このオフセットボーリングをやりたがらない(知らない)ところも多いと聞きます。この辺が英国との違いでしょう。

+020、+040、+060のどのピストンをチョイスしてもその値段は同じですが、ここからが難解な世界に入るわけで、ピストントップの形状が(1)フラット (2)セミディッシュ (3)ディッシュ (4)オフセットディッシュと何種類もあるのです。これによって相当圧縮比(コンプレッションレシオ)が異なることになり、また価格差もあります。そして圧縮比はどれくらいが「90BHP」「6800RPM」のエンジンには最適かと言うと、目安は11:1前後と言えます(9.75〜11.25以下)。これは日本のガソリン、オクテインや交通事情、そして何より後々のメンテナンスからも考え合わせた経験値ですから、立証はできませんがこの国にならこの位がベストです。

お薦めは(2)セミディッシュピストンで、6ccまたは7cc位です。ピストンサイズの+020から+060までなら全て同じ価格ですが、私なら+020を選択します。その理由は出力的には大差ない事になり、何よりエンジン排気量だけで言えば、1293ccは1300cc以下のルールを持つ競技に全て出場可能になるからです。

大して速くもないレース用Aタイプ及びBタイプで毎回エンジンをオーバーホールしている方もいると聞くと、これらの情報のほとんどが「回転さえ上がれば自動的に馬力もトルクも上がる」と勘違いしているメカニックやオーナーが、毎レース「上でふけない」「上で回らない」と何でもタイムの向上をエンジンだけに背負わせるからで「出力だけではタイムの向上は無理」と言う事を知れば、上限6800RPMでも「90BHP」で筑波サーキットを1分12秒前後でラップ出来るミニが実在するわけですから、出力以外も重要な要素だと言う事は明白です。

これは公道上でも同じことが言えるのです。「公道用」のミニである以上はクランクやコンロッドそしてブロック等には高い耐久性が重要と言えます。1293ccのミニを、どのヘッドとカム、そしてフライホイルその他、どの部品の組み合わせがバランスのとれた「90BHP」が最適かをお知らせ致します。《公道でも走行会でも速いミニ》とはいえ、耐久性に不安を感じる方も多いかと思いますので、この点も何をどのように対策すれば良いかもお伝えしましょう。

 

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