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No.04  

クランクシャフト

この部品は毎分7000回転にも耐え、30万〜50万kmも走行出来るだけの強度を持っております。ミニに限らず英国車の多くは、馬力とトルクバランスの良い実用的なエンジンが多い為、公道上での故障やドラブルは日常のメンテナンスで十分防止出来る場合が多く、電気系・水回り・燃料系と、いずれもエンジン外部のメンテナンス不良が原因でして、エンジン本体のトラブルはほとんど聞きません。

良いオイル(新品)と水が十分ならば、大きなエンジントラブルは全く心配いりませんが、その逆は確実に大きなトラブルに直結する事になります。特にクランクシャフトには常時エンジンオイルが潤滑されていなければなりません。

中古のクランクシャフトの回転部分表面には、多くのキズ(レコードライン)が入っており、このラインの多くはオイルに入った金属ゴミによって出来ます。ラインの深さによっては研磨(リグラインド)しなければなりません。その際も90BHP仕様の為には、どの辺りが大切かをお知らせ致します。

親メタル、子メタルと呼ばれる部分があり、親メタルはクランクシャフトとエンジンブロックの軸受けとの間のベアリング、子メタルはコンロッドとクランクシャフトの連結部分に付くベアリングです。このどこか一ヵ所でも「深いキズ」が入っていると【研磨】と言う事になりますが、それはそのキズの深さによっても異なります。これを判定する前に誰がやっても失敗のない研磨作業にトライしてみて下さい。

キズ部分にコンパウンドを塗り、ヒモ状によじったウエスを引きながら両手で一回転させます。浅い「キズ」程度なら、この方法でも十分効果があります。時間は相当かかりますが、これで失敗はありません。そしてこの方法が実は、機械研磨の後もレース用エンジンを作る時は必ず行う仕上げ方法なのです。どんなに精度の高い砥石で研磨してもその表面の凸凹が皆無とはなりません。特にクランク研磨の作業において面精度はゲージブロックの10〜20倍位のデコボコがあるのです。

どんなにあなたの目が良くて、指先が繊細でも10分の1mm位が限界で、100分の1mm前後では、人間の持っているセンサーでは役に立たない訳で、そうなると、案外アナログ的な研磨方法が凸凹の平面出しには、実は大切な仕事をしてくれるのです。

【研磨】の必要の無いクランクであれば、アナログ研磨でメタル交換だけで充分OKですし、純正クランクはスタンダードサイズの方が有利なのです。ちなみに英国人は+020以下のクランクをセミレース用エンジン及びロードチューニングに使いたがらない事からも細く磨耗された分、馬力に耐えられない可能性が増大するからと考えるのでしょう。

 専門的にチューニングを行う多くの英国のショップでは、リスクの高いパワーアップは好まれません。特にミニの場合、必要以上の「スペックドリーマー」の要求通りにエンジンを仕上げると、価格は割高でトルク不足、そして役に立たない高回転ミニエンジンになってしまう訳で日常的に乗り続けるミニを目標にするのであれば、レース用のスペックや高回転型に近づくと思われる部品の選択は絶対にやめた方が良いと言う事です。

そこでクランクの話ですが、+020以上の「研磨」を必要としないあなたのミニエンジンであれば、最大の強化部品は何と言っても『センターメインストラップ』なる品物です。

見た目はただの《四角い鉄の棒》ですが、安価な割にその効果は絶大で、これを取り付けないで90BHPはあり得ません。その理由は、高出力高トルクになるほど純正センターメインキャップ(材質の密度が小さい鋳造製品)の強度が不足気味となり、クランクが曲がり始め“偏心”する事で、左右のボルト強度以上にメインキャップが変形するのです。この『センターメインストラップ』には純レース用4本ボルトタイプがありますが、これは5000RPM〜9000RPM以上を随時キープするレース用にのみ使用する部品で、公道用ミニには全く必要ありません。

純正センターメインキャップは見た目には強度が高そうなのですが、高出力高トルクを目標にしたエンジンの瞬間的な7000RPM前後では、この純正部品は確実に役不足となり、最悪の場合はクラックが入ったり、2本のストラップボルトが延びてしまうケースもあるのです。

10%程度の出力アップでは全く問題は発生しませんが、20%以上となるとこのセンターメインストラップがAタイプエンジン最大の改良チューニングと言えるのです。この補強が絶大な効果をもたらす事は証明されております。このセンターメインストラップを補強しないで、走行会をエンジョイされているミニは

(1)ただ運が良いか?

(2)アクセルを踏んでいないか?

(3) 馬力が出ていないか?

と言った具合です。あくまでも経験による答えではありますが、「90BHP」を要求するのであれば、メインストラップへの改良は絶対に必要なポイントであります。もしあなたの古い1275GTクラブマンやバンプラ、MG1300GTであっても、エンジンオーバーホールのついでにチューニングをお考えなら、このポイントだけは後々の為にも追加しておいた方が必ずお得で安心を手に入れられるのです。

 

次回は、クランクの本格的な機械加工の要点をお知らせ致します。

 

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