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No.10 エンジン出力の向上

エンジン内部には一切手をつけず、WEBER40DCOE、スワンネックインマニとタコ足、そして極太エキゾーストを・・・と言った様に何でも大きいほど効果も大きいハズと購入する。見た目の派手さだけで悪い訳は無いだろうと妄信してしまう。スペックを積み上げる事に夢が先行してしまい全く実用チューニングミニとして役立たなくなってしまう。このように、お客様の知識不足と計画性の低さが問題である場合と、修理メカニックのエンジンチューニングに対する経験不足(無知)と技術不足である場合、そして何より「乗って楽しい。」「速くても故障しない」ミニを作るためのメニューが極端に過激なケースがほとんどの様です。このような失敗は相当数のミニで起こっている事でしょう。
1380cc+ウェーバーに超シャコタンのエアコンレスで毎日通勤に乗り続けるミニオーナーの方が北海道道東地区にいらっしゃるようですが、快適でもなく【我慢】を強いられるチューニングミニでは、結果として乗りづらいから乗らなくなり、乗らないからエンジンも始動しづらくなり、ガレージに入れっぱなしとなって《お蔵入り》になってしまうのでしょう。

パワーアップを考える時、必ず頭に浮かんでくるのは排気量を増加させる【ボアアップ】のことでしょう。1275ccのボアを拡大した際1293〜1380ccの範囲であってもそれ程の出力変化はありませんが、最大でも排気量が8%増大するので、それに見合ったチューニングメニューを考えないと効果が大きく得られません。例えば1293cc(+0.20)とした場合、プラス18cc分の恩恵は、それだけではほとんど変化しないはずですが、そのエンジンにハイカム、チューニングヘッド、タコ足、そして出力の要であるキャブレターを装着することによって90馬力がドンドン現実的な目標となるわけです。日本の道路状況は「都会ではとにかくストップ&ゴーの連続ばかり!」「峠道は登り勾配がきつく、ヘアピンカーブのUターンが多くて、さらに道幅も狭い!」といった具合に自動車にとっては過酷な道ばかりです。この国土に合うエンジンチューニングを行うにあたって、先々の発展性も視野に入れつつ、真夏の渋滞でも問題なく走れる90BHPミニでなければ良いチューニングミニ1293とは言えません。

ここでハイカムとチューニングヘッドの選択が最も重要となります。カムを何度も交換するのは工賃の無駄が大きいでしょう。またチューニングヘッドは1基が大変高価な部品で、選択ミスは“浪費”となってしまうという事です。ここでも「1300ccにフラットトップピストンは“ダメ”」と同様に“ダメ”なスペック(相性が合わないスペック)のカムとチューニングヘッドが存在します。

英国で有名なメーカーに、ケントカム(KENT CAMS)、パイパーカム(PIPER CAMS)、その他数社と色々ありますが、ここではケントカムのスペックを中心に、どこが異なるのか?日本の交通事情に適するのはどれか?など説明させて頂きます。
1300cc(1275〜1293)以下の場合なら上限はMD276まで、1300cc以上のボアをチョイスする際もMD276までにしておく事が良いでしょう。若干MD276は渋滞が多い大都会には不向きです。絶対失敗したくない方にはMD266をお勧め致します。さらにその一番下にMD256と言う若干「大人し目」のカムが控えておりますが、これも上手に使用すればMD266とほとんど同等の中間馬力が得られ、また先々発展させる場合も、問題なくMD266以上に変化させられるのです。値段に関係なく正しい部品を選択すれば、部品代金も工賃も全て満足出来る方向へと近づく事になるわけです。

次回はMD276のカム特性をご説明致します。

 

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