38年も前の経験談ではありますが、ISUZUベレットGTRや117クーペのエンジン出力向上を行うと、必ずシリンダーヘッドのカムが焼き付きを起こしてしまいました。これもオイルデリバリーが高回転になると追い付かなくなり、殆どの場合がシリンダーヘッドのフルオーバーホールが必要となってしまうのです。
もちろん高額になることは言うまでもありません。運良くガスケットが先に抜けてしまっていた方がコスト的には安上がりでした。この様にならないためにもオイルデリバリーは、最も大切な事のひとつなのです。高性能オイルを入れていても、大事な部分にオイルが届けられない!なんて事だけは絶対に避けなければなりません。
あらゆる多くのトラブルも良い経験となりましたが、いくら高出力なエンジンにチューニングアップがなされても、耐久性が低いエンジンは結果として「間違いだらけのチューニング」という事なのです。エンジンを、どこまでコツコツと地味な改良改善を積み上げていくかで、その耐久性は大幅に異なるのです。
余談ですが、ベレットも117も5500RPMを超えると4速トランスミッションのシフトレバーからのバイブレーションは、まるで振動ドリルの様にビリビリと震え、手で握り締めても全く止まらない困った車でした。
日本人の生真面目さや正確な作業能力は、大変に高度な国民性ではありますが、純正部品や競技用部品(チューニングパーツなど)の精度や強度を再チェックしたり、強化する事には、あまり興味が無いようで、なんでも高価な部品さえ取り付ければ、それで全てが解決とはならない事が多く、高出力、高耐久性の両立が『上手なチューニング』であり『見識の高いエンジン』と言えるのです。
そして次なるステップは、皆様も聞いた事あるかと思いますが、窒化処理やタフトライド法など金属の表面処理についてです。
窒化処理では、窒化層の最表面層に安定した圧縮応力が存在するため、耐摩耗・耐疲労性を有します。クランクシャフトをはじめ、カムシャフトなどは軟らかい鋼で作られ、その表面が軟らかいままだと金属同士の接触でかじりを生じ、摩擦抵抗となります。これを被膜によって摺動(しゅうどう:モノが擦り合わさって動くこと)抵抗を低減させ、耐摩耗性を向上します。タフトライド(新商標:イソナイト)は塩浴軟窒化と呼ばれる窒化処理法の一つで、窒化より硬度は低いが、処理が簡単であることからレーシングパーツに用いられています。 |