No.12では、MD276カムの特性を説明させて頂きましたが、今回はその後に何を選択していくべきなのかを考えていきたいと思います。
このMD276カムを使用する場合、次なる重要なチョイスは通称「チューニングヘッド」になります。大まかに分別するとチューニングヘッドは、ステージ1、ステージ2、ステージ3をはじめ、純レース用や特殊なバルブを使用するタイプまで多種ありますが、通常の1300ccエンジンのチューニングにはステージ2で十分です。英国でも多くのチューナーから様々な呼び名で多種チューニングヘッドが存在しますが、一般的なステージ2の仕様は以下のようになっております。
INバルブ径:最大36mm
EXバルブ径:最大29mm
燃焼室容量:約22cc
リチャードロングマン社のヘッドではGT6ULに相当しますが、上記の仕様を目安にお気に入りの「チューニングヘッド」を見つけてください。決して既存のヘッドにバルブだけを入れ替えたり、ポート研磨したりして、ご自分で「チューニングヘッド」を製作しようとはなさらないでください。“友人にオートバイ屋のメカニックがいる”とか、“あいつは2級整備士の資格を持っているから”などと言ってトライしても、加工の種類が異なるため全く違う作業をさせることになってしまい、成功する事はありませんので、絶対お勧めいたしません。その証拠に、「チューニングヘッド」を有名ミニ屋さんで独自に製作販売している所を日本ではあまり聞きません。その理由は、リスクが高い割に工賃(加工賃)分を上乗せすると、完成品と比べ割高になってしまうからです。
さて、「チューニングヘッド」が決まれば、次は「ピストン」の選択になりますが、結論から言えば、6ccディッシュで十分です。何故なら、低回転からの太いトルクとスムースな吹け上がりが『乗って楽しいミニ』にとって何より重要であって、高圧縮比(高回転・低トルク)=『乗って楽しいミニ』ではないからです。具体的には、純正ピストンの+20サイズ(1293cc)で90馬力のパワーに十分耐えることができます。将来的にレースに出場予定があれば高価な鍛造ピストンを検討されても結構ですが、そうでなければ、純正品より上質な鋳造ピストンを選択しておけば、まず間違いないでしょう。純正ピストンは4ヶセットで約10万円位で、社外メーカーのミニ用鋳造ピストンなら1台分6万円前後でお買い求めいただけま す。
それぞれ長短ありますが、市販されているミニ用ピストンであれば、90馬力のエンジンで7000回転を上限の運転であれば、10万kmの間『乗って楽しいミニ』にご使用いただけます。勿論、ミニにはオイル管理が重 要なファクターである事をお忘れにならないでください。
最後に、エンジンの加工について注意すべき点をお伝えします。一般的に数値は理解し易いことから、どうしても誤差を少なくしたくなりますが、エンジンの通称“腰下”をどんなに高精度に加工してもそれ程の効果は期待できません。例えば、ボアやクランクの加工において、100分の1mm以下から10倍以上の1000分の1mm前後の精度を求めても、金属の熱膨張などの影響を考慮すると、高額な支払いをして高精度な加工をした意味がないことがほとんどです。ピストンにおいては、メーカーが指定したボア径のクリアランスの範囲の中間より若干大き目くらいの精度で十分なのです。12気筒のフェラーリでさえ、そこまで高精度には作られていないのですから。精度より何より、時間と労力をかけていただきたい改善・改良点は以下のようになります。これらの点は、90馬力エンジンとSUツインキャブ仕様の『乗って楽しいミニ』を計画的に確実に作り上げていくのに欠かすことができない重要な項目です。
① ハイキャパシティ オイルポンプの採用
② センターオイルピックアップパイプの装着 (コーナリング時に有効)
③ センターメインストラップの装着と追加工 (必須)
④ ピストンとコンロッドの重量誤差低減のための加工
⑤ クランク、プーリー、フライホイールのダイナミックバランス
⑥ 11スタッドへの加工 (後々では高額な出費となる)
⑦ 軽量フライホイールとプレッシャープレートの採用 (純正品の80〜90%の重量)
⑧ オイルクーラーの装着 (9段で十分、走行会以上は13段が必要)
⑨ アジャスタブル チェーンドライブ タイミングギア セットの採用
⑩ オイルホール付きタペットの採用 (軽量タイプが望ましい)
次回は、続いてキャブレターについて考えていきたいと思います。
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