ミニ1,000エンジンの出力アップで何かと気になる所は、前回お知らせした通りですが、
75馬力7,000回転のミニ1,000を製作するにあたり、これはダメ、あれはダメを明確にしておきましょう。
まず第一に、オーバーヒートですが、ミニ1,000はほとんどがオーバーヒートはしないエンジンですが、
渋滞中やアイドリング時にはOKでも、「サーキット走行」となると話は別です。
常時エンジン回転が4,000から7,000回転を連続して使い、加速と減速を激しく行うわけですから、
ウォーターポンプの回転を上げて、速くポンプを回せば、水は多量に流れて、ラジエターで速く冷却されて、OKと考えるでしょう。しかし、「サーキット走行」的な走り方をすると逆にダメなのです。
これはウォーターポンプのプロペラ(羽根)の問題で、プロペラを速く回しすぎると、逆に水の流れる量とスピードが落ちてしまうのです。そしてエンジンが高回転で回れば回るほど、ホーバーヒートする様になってしまうのです。
これを簡単に説明すると、2,000から3,000回転で最も効率良く水を送り出すプロペラのピッチであるために、高回転では、その効率が落ちてしまう事になるわけです。しかし、その解決方法はとても単純な方法なのです。
ポンプ側のプーリーを大きくすることで、ウォーターポンプの回転を下げれば良いのです。
巷では、アルミ小径プーリーなる物が販売されておりますが、間違ってもこの小径プーリーは、チューニングエンジン用では無く、ノーマルエンジン用ですので、「勘違い」しないで下さい。また、このアルミプーリーは、軽量化のために高価な材料で作られたと考えられますが、中にはVベルトがどんどん食い込んでいってしまうくらいダメな品物も有るようです。充分ご注意下さい。
大径プーリーにして、「サーキット走行」も対応し、その後街乗りしてもOKか?渋滞中でもオーバーヒートしないか?確実な事は、「東京の真夏でもOKでした。」とお答えはできますが、お盆の高速道路のUターンラッシュで、「東名高速60km」はテストしておりません。
あまりテストもしたくないですが、電動ファンが正確に作動している限りにおいてはオーバーヒートはしません。
第二に、車高とアライメントとショックアブソーバーの説明となりますが、車高はゴーカートやF1のように地面すれすれにしても、コーナリングスピードは上がりません。また、車体がどんなにハードコーナリングしても、傾かない様に、ガチガチの足回りにしても、それは間違いなのです。
これは、地面(道路やサーキット)が真平らではないからです。高速道路上で、となりを走行している車のタイヤの前後を、機会があったらちょっとだけ見てください。
上下に動いていないか?それとも車体が上下にフワフワ揺れてないか?
いずれにしてもタイヤと車体は常に上下に動いている事になり、路面の凹凸や、タイヤの設置面の変化によって、止まる事無く、動き続けているのです。そして、サスペンションのストロークが重要になり、車高を下げて、ストロークを減少させると言う事は、それ以上の凹凸の入力がタイヤに伝えられると、車体は大きく上下し、タイヤがグリップを失い、大幅なオーバーステア(リアが出る)が発生し、スピンと言う事になります。
次に、古いラバーコーンを使い続け、正しいラバーのストロークが無く、硬く弾力性のほとんど失われた状態では、いくらショックアブソーバーをアジャスタブル式に交換しても何もなりません。
これはショックアブソーバーの仕事を知れば理解し易いと思いますが、ストロークの少ないサスペンションと、弾力性の失われたラバーコーンとでは、車体は常に上下に跳ね飛び、コーナリング中であっても同様で、ショックが仕事をする前に(ストロークを制御する前に)、路面からタイヤが離れてしまい、グリップを大幅に失い易くなるのです。
タイヤは見た目には路面から離れている様には見えませんが、実は走行中に路面への各タイヤの圧力(接圧)は思った以上に変化しているのです。
ミニはフロント60%、リア40%くらいの重量配分になっており、これはブレーキを残しながら、若干ハンドルを切った際、どのくらい変化するのでしょうか?
この様なコーナリング中にストロークの少ないミニは、リアタイヤが簡単にロックしたり、車体の後方が外側に回りたがることを体験した方は多いはずです。
シャコタンミニは、いくら見た目にカッコイイからといって、何も効果は上がらないと言う事を知って下さい。
第三は、アライメントです。これはトーイン、キャンバー、キャスターと言った足回りの基本ですが、車高を下げると、まずフロントタイヤがどんどん後方に押されて行く事になり、前側のタイヤが開いていく事になります。ミニはトーアウトが正しいわけですが、開き過ぎはダメです。
そして正しいポジションにしないと、まずタイヤが鳴き易くなり、不思議な片減りが起こります。
前述しましたように、車高を下げても、(大幅には)効果のない事をお伝えいたしましたが、フロントタイヤの開きすぎは自動的にこれが起こります。注意してください。
次にキャンバー角度の点ですが、これもフロントタイヤが、大幅に「八」の字状態の車を見かけますが、毎日ジムカーナのような走行を繰り返すわけでもないのに、極端な「八」の字も必要ありません。筑波サーキットで1分17秒台のミニ1,000改も2度だけ出るロアアーム(固定式)に変更してありますが、今の所これで充分です。このミニは街乗りの事も考えて、ノーマルの車高から6から8mm程度しか下がっておりません。
ですから本当のキャンバー角は多分2度以下でしょう。とにかく純レース使用の車と同一にする事が、全て良いと言う事は無いのです。
そして馬力だけあっても車高だけ低くて、タイヤだけ太くて、極太マフラーが装着されてても、簡単には車は速くならないと言う事です。
1,000ccエンジンのチューニングについて、益々難解な部分をご説明いたします。 |